数百万円もする高価な楽器を選ぶとき、迷いが出ます。何を頼りにしたら良いのか、考えれば考えるほど、どんどんわからなくなってしまうのです。それは当然ともいえるでしょう。定期預金を解約して、後戻りの出来ないような高価な買い物となるので(客観的に見ると、そこまで大げさな話しでは無いのですが、当事者は真剣です)、視野がどんどん狭くなってしまうものです。それはしかたないことです。

 だから最終的には「ラベル」に走ってしまう(頼ってしまう)人がほとんどなのです。

 「ラベル」に頼ってしまうのは論外としても、「音色」で判断しようとする人がとても多いのです。自分の好きな音色の楽器を選ぼうとするのです。

 しかし「音色」というのはとても抽象的なものです。自分のそれまでの価値判断自体が、後の自分から見たら、程度の低いものと言い切れるからです。だからそういう抽象的な判断で、楽器を選ぶのは危険です。

 それでは楽器を選ぶときに、どのような判断基準で楽器を選ぶのか(試奏するのか)というと、自分自身が人間ではなくて、測定器になったつもりで、冷静に、感情をなくして「計測」するのです。

具体的にはこの場で言葉で書くことは不可能ですが、わかりやすいところでは
・音量
・バランス
・発音特性(レスポンス)
・ダイナミクス(重要項目)
・周波数特性
などです。正確なことを言えば、弓の性能の話しがその前に来るくらいです。

 これらはすなわち、楽器の構造(作り)を表しているのです。音色というのは、この中から将来作り上げられる価値観であって、最初に「音色」で判断するのは危険です。

 実際には、演奏者側にそこまでの冷静さを求めることは難しいのです。なぜなら、演奏者側は、「演奏」するための楽器を選んでいる(試奏しにくる)わけで、計測マシンになりきる練習は普段にしていないからです。

 だから、きちんとした冷静な技術者、楽器の専門家の助言を聞いて(受け入れて)、普段の自分とは異なった冷静な価値観を得ることが重要になるのです。

 「演奏」だけからは、良い楽器は絶対に見えてきません。だから多くの上手な演奏者(プロもアマチュアも、ベテランも初級者も)が、変な楽器を買ってしまっている現実がたくさん存在しているのです。こう言うと、プライドの高い方々から嫌われるのは、承知の上での、真のアドバイスです。

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