以前、私のホームページのマイスターのQ&Aに「ヴァイオリンは上げ気味に構えた方が良いのですか?」を掲載しました。そこに書かれている内容を簡単に説明すると、「楽器を構える理想的な角度とは、重力を効率的に理想出来るような角度である」という事なのです。

 すなわち、弓の圧力をかける方向は、重力の向きが一番効率的なのです。すると、楽器の向きは自然と水平が理想と言うことになります。

 ところが、この原理をそのままチェロに応用しようとしている人が意外と多いのです。チェロの場合にはさすがに楽器を水平に構えることは不可能ですが、エンドピンを長めに出して、チェロを可能な限り寝かせて弾いた方が、重力を利用して弓の自然な圧を掛けることが出来ると考えているのです。

 しかし、ヴァイオリンとチェロは同じではありません。

 ヴァイオリンは胴体の質量が小さく、楽器本体が(チェロと比べて)重力の影響を受けにくいのです。さらに、ヴァイオリンは胴体を直接(肩当てを間に入れたとしても)肩で保持します。だから、楽器本体がブレないのです。

 ところがチェロの場合には、ヴァイオリンと違います。チェロ本体のサイズは大きく、質量もヴァイオリンと比べたらはるかに大きいです。さらに、楽器をエンドピンを長めに出して寝かせて構えることで、エンドピンがしなってしまいます。すなわち、重力の影響で楽器がブレてしまうのです。

 チェロを寝かせて構えて、重力の方向を利用して弓の圧力を効率的に発揮しようという考え方自体は、その部分だけに言えば間違っていません。しかし、目を楽器本体に向けると、弓に圧力をかけたことで、楽器が重力+弓圧の影響を受けて大きくブレてしまいます。こうなると、摩擦力が途切れてしまうのです。よってチェロのエンドピンを長めに出して、楽器を寝かせて弾いている人の音はソフト(かすれている)のです。

 すなわち、ヴァイオリンとチェロとでは、考え方を変えなければならないのです。

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