ルジェロ・リッチ演奏による「クレモナの栄光」という有名なレコードがあります。このレコード、1963年にニューヨークのスタジオにて15挺のクレモナの名器を一同に集めて、ルジェロ・リッチ(45才)が弾き比べをした録音盤です。
一方、”the Regacy of Cremona”のCDは、工房のお客様からお借りしているCDなのですが、2001年に同じくルジェロ・リッチ(83才!)が18挺のクレモナの現代製作者のヴァイオリンを弾き比べたCDです。現代版「クレモナの栄光」という感じでしょうか。
レコードとCDを一通り聴き通してみました。
確かに、楽器が変わると、音が変わっていることは判ります。しかし、一貫して感じたのは、楽器の差よりも、ルジェロ・リッチの演奏(特徴)という事です。極端なことを言えば、知らずに楽器が入れ替わっていても、気がつかないかもしれません。
逆の事も言えて、事前の試聴無しのぶっつけ本番のブラインドテストで、私はどの音がどの楽器なのか? ということを、当てることは出来ません。よく「ストラドの音は・・」とか「グァルネリの音は・・」とか雄弁に論評している人がいますが、大した能力だと感心しています。
さて、古い名器と、現代の楽器との差はあるのか?というと、実際に差はあります。しかしそれは優劣というよりは、個々の楽器のキャラクター差という感じです。それ以上に大きな要因は、レコーディング環境とか、レコーディング機材の時代の差の方です。
もっとも、どちらのLP、CDでも、一貫して「ルジェロ・リッチの演奏」という印象が強かったです。年をとっても、その演奏家の特徴(私が一番感じたのはヴィブラートのかけかたです)が大きくでるのはとても興味深い比較でした。
楽器の差は、そこまで強烈には感じませんでした。ただ、だからといって「演奏者さえ優れていれば楽器は何でも良い」と言っているわけではありません。
蛇足になりますが、上記の15挺の名器、1963年時点で総額75万ドルだそうです。安っ!! とういうか、それが常識的価格のはずです。
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