ネット検索から私のブログを読んでいる方は、私がカントゥーシャ氏の弟子だからカントゥーシャ作の楽器を褒め、宣伝しているのだと思っていると思います。それ以前に「ドイツ製の楽器なんて・・・」って、頭から読み飛ばしている方も多いと思います。
しかし、カントゥーシャ氏の技術理論を知り尽くしている私が言い切りますが、カントゥーシャほど理にかなったヴァイオリン製作の理論と、それを生涯に渡って一貫して実行し続けた製作者は、私は他に知りません。
その証拠に、カントゥーシャ作の楽器は数十年という年月が経っているのに、ほとんど歪みが出ていませんし、ネック下がりもほとんどありません。それは単に製作精度が優れているだけでなく、製作理論が理にかなっているからなのです。私自身、カントゥーシャ工房で勉強して初めてその意味が理解(私が元々理系の考え方をするから特にそう感じたのですが)できたのです。
私の知る他のヴァイオリン製作は、普通の人が見ただけでは全く同じ作業工程を行っているように感じるかもしれませんが、実はもっと「感覚的」なのです。しかし、カントゥーシャ氏の製作理論は、もっと数値だとか、定規だとか、決まり事の上で実行されます。感覚的な作業の方が格好良く感じるかもしれませんが、そうではないのです。
例えば、下記のイラストは、私の工房の製作ベリヒト(マニュアル)のほんの一部を抜き出して、公開しても無難なイラストだけを再編集した物です。これまで私の弟子以外には見せたことはない、実に貴重な図です。
内容は「バスバー合わせ」に付いての製作マニュアル(の一部)です。
バスバーにはシュパヌングという「外力に対しての、逆内部歪み」を掛けておくのが一般的な製作方法です(悲しいかな、それさえも知らない製作者も多いのです)。バスバーの両端を微妙に隙間を開けて、それを押しつけて接着するのです。
しかしほとんどの製作者は、この部分が感覚的なのです。私の師匠の無量塔藏六氏の製作理論でも、感覚的にバスバー合わせを行っていました。「面で」圧着しているのです。
ところがカントゥーシャ氏の理論は、驚くほど「理」にかなっていたのです。バスバーの接点が常に面ではなく横から見て「一点」となり、さらに、任意の一点が付いている(押さえた)ときにも、バスバーの傾きは常に直角になるように、「バスバー合わせ」を行うのです。
何が言いたいのかというと、「外力に対する力の分散」と「内部歪み(ゆがみの無さ)」が、感覚的ではなくてきちんと計算された物なのです。だから、長年に渡って良い状態を保てているのです。
もちろん、今回紹介したものは、バスバーの製作理論の中だけでも、ほんの数分の一の内容です。まして、全楽器製作理論の中では、数百分の一の内容と思います。だからこれだけでカントゥーシャ作の楽器を説明はできませんが、意味も無く「カントゥーシャ作の楽器は優れている」とは言っていないのです。
信用しない人にまで説明することはしませんが、私の技術的なプライドをかけた説明だと思ってください。
注:技術的内容、製作に関しての質問は一切受け付けません。
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