響板が薄すぎたり(修理による削り過ぎなども含む)、または構造的に未熟な製作のチェロで箱鳴りがする楽器は多いです。そしてそういう楽器を「低音が豊か」とか、「発音がしやすくて弾きやすい」と、残念ながら勘違いして購入してしまう人がとても多いのです。その傾向は楽器の価格帯にはよりません。

 箱鳴りのするチェロを、「低音が豊か」とか、「弾きやすい」と勘違いしている人を、私はトランポリンで下記の様な跳び方をしている人に例えます。

 トランポリン初級者に多い跳び方ですが、トランポリンのベッド(布の幕床)の上下動をだけを意識しすぎるあまり、腰砕け(膝ガクガク)の跳び方になってしまいがちです。確かにベッドは上下に揺れているかもしれませんが、膝がガクガクのために、ベッドの動きが肝心の身体に伝わっていません。

 すなわち、トランポリンのベッド(幕)だけが上下に動く、表面的な運動であり、「本人は、大きく跳んでいるように感じる」のです。しかし、他人が客観的に観察すると、膝がガクガクで、トランポリンのベッドの上下運動に振り回されている感じです。

 しかし少し上達してくると、表面的なベッド(幕)の動きよりも、自分の体重を真っ直ぐに床に伝え、床の反作用とバネの効果を利用して、跳ぶ意味が見えてくるはずです。上級者ともなると、まるで床が体重でグッと沈み込んで、跳ね上がっているように感じるほど、力強いです。

 この感覚は、楽器でも全く同じです。

 箱鳴りのするチェロは、トランポリンのベッド(幕)の上下動だけで跳びはねている気になっているだけなのです。弦を表面的に振動させているだけです。これでは響板はドライブできません。

 響板をドライブして振動させて、すなわち音を出すためには、裏板の抵抗(反作用)、さらに言えば、床の抵抗(反作用)を感じながら(利用しながら)弾くことが重要であって、良い楽器というのは、それが出来る楽器なのです。

 それはチェロだけでなく、ヴァイオリン~コントラバスまで共通です。

 

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