先日私の工房のお客と「演奏会などのビデオ撮影料金にはかなりの差があるが・・・」という話をしました。ビデオに詳しくない方からすると当然の疑問なのかもしれません。
 ちなみに撮影料金は大手撮影プロダクションと個人撮影とでは料金の桁が違ってきますが、我々の演奏会で大手撮影プロダクションに撮影を依頼すると言うことはほとんどありませんので、ここでは個人撮影(小企業、個人事業、アマチュア撮影)について書きます。
 撮影の料金の違いには次のような内容がかかわってきます。
手間
 当日の撮影に費やす時間だけでなく、リハーサル、事前の打ち合わせ、事前の準備(スコア読みとかも)、撮影後の編集時間などがかかります。
 ビデオ撮影に詳しくない方は、演奏会本番だけを撮影していると思っていますが、実はそれ以外に多くの時間を費やしています。
経費
 撮影するためにはメディア(テープ・ディスク)代とかバッテリ代とか、交通費とかの消耗経費がかかります。業務用の高品質テープやディスクなどは1本(枚)だけでも数千円もします。
 さらに重要なのが、機材の減価償却費がここに計上されることです(実際には利益の一部に含めることが多いのですが)。すなわち、高価な撮影機材を使った撮影は、当然ながら料金も高くなるわけです。
利益と人件費
 撮影依頼する側からすると、「撮影料金」とは上記の全ての合計を料金として考えていますが、撮影する側からすると利益はその中のほんの一部となります。
 撮影を1人で行っているか、複数で行っているかによっても料金は大きく違ってきます。


具体的な撮影料金に違いがでる箇所
撮影機材のグレード
 ホームビデオ(5~10万円)と業務用システム(100万~数千万円)との違い。
カメラの数
 1カメラで撮影するのか、複数カメラで撮影するのかによって、撮影当日の手間の違いだけでなく、撮影後の編集の手間が全く違ってきます。
編集の方法
 編集しないでDVDレコーダーでDVDに焼いて納品する方法と、パソコンで細かな編集を行った後にタイトル・文字入れを行って、さらに高品質レンダリングを行ってDVDを作るのかによって、編集の手間は全く違ってきます。
パッケージデザイン
 DVDのパッケージ作成、DVD盤面印刷の品質などでも手間は全く違ってきます。
ハイビジョン撮影か
 最近ではハイビジョンで撮影することも多くなりました。ほとんどの納品は標準画質DVDですが、ハイビジョン納品というのも可能です。ちなみにハイビジョン編集をする場合には、これまでよりも編集時間は数倍も多くかかります。
撮影方法
 事前にスコア読みして、撮影台本を完璧に作っておく撮影方法(その究極はTVの演奏会収録)と、その場の雰囲気でカメラを振る撮影方法(無茶苦茶振り回すという意味ではありません)では手間が全く違ってきます。


 ビデオ撮影とはこのように大変で撮影コストも多くかかるものなのです。以前私が撮影したDVDを観て「何でN響アワーのように撮れないんだ!」と文句を言われたことがありましたが、それは無茶ってもんですよ。
 ちなみにN響アワーなどがどうして素晴らしい撮影かというと
・プロフェッショナルな撮影集団(さらに永年にわたるノウハウ)
・資金力(機材の良さ=ある意味コスト度外視)
・撮影にかける時間(これもコスト度外視なほど)
・撮影を優先したセッティング(カメラ配置や照明の強さ=ある意味聴衆度外視)
・素晴らしい演奏(結局はこれにつきるのですが・・)
 これをビデオの基準に考えてはいけません。

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