通販の普及とか、インターネット情報検索の浸透に伴って、年々、我々プロとしての技術が単なる無料サービスとか、アフタケアくらいに低くとらわれていると実感しています。

 これはプロの演奏家の「演奏」が、無料の行動と思われているに等しいのです。それはその演奏家の能力(才能)や、子供の頃から掛けてきたお金、楽器に掛けてきたお金、そして現在の努力を認めてくれないのと同じです。
 ただ、ほとんどの方は演奏家に対しての大きな敬意は持っているので(なぜなら、演奏家のように上手に弾けないのは実感しているので)、演奏家の事をそれほど低く思っている人は少ないと思います。

 ところが我々職人は、とても低く見られています。楽器や弓を仕入れて販売したり、弦を交換したり、ちょっとした調整ならば自分でも出来ると思われているのです。毛替え作業なども、悲しいかな、大した技術とは思われていないみたいです。

 

 だから弦を交換したり、ちょっとした調整をしたときに、「佐々木さんにいじってもらうと、楽器がとても使いやすくなる」と喜ばれるのは、とても嬉しいものです。大きな修理をして喜ばれるよりも、小さな、何気ない調整を喜ばれる方が嬉しいかもしれません。

 なぜなら、小さな調整こそ、技術の基本であり、自分自身の行動の芯になるものだからです。

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