先日同業者の先輩とお会いする機会があって、「我々もけっこうな歳になって、折角お金をかけて色々と揃えた工房も閉めるときが近いですね。そうしたら顧客にも迷惑をかけることになるけど」みたいな話になりました。

 同業者の一回り上の先輩方も、亡くなった方も多くなってしまいました。

 理想は子供とか、後継者が後を継いで、長く工房(または工場)を持続することです。しかし、日本の税制や社会的信用度だと、我々は子供や後継者に後を継がせることができないのです。できにくいのです。

 それは製造などの技術では利益が出ない仕組みと、仮に利益が出たとしても、専従の会計士を抱えている法人で無ければ税金ががっつりかかる税制が基本となっているからです。

 以前ならば、「個人事業者はお金は貯めることはできない税制だが、少額必要経費に関しては大目に見る」という税制でした。しかし現在は少額必要経費の額は相変わらず10万円以下。道具や機械の値段はどんどん上がっていて、ちょっとまともな物を購入するとあっという間に資産登録です(もちろん複数年で減価償却処理はできますが)。それは課税対象です。

 さらにデジタル処理によって税務署のチェックも以前よりも厳しくなっているので、家庭用の物を購入して事業用で登録するなんていい加減なことは出来ない時代です。私は車も、事業用としては一切計上していません(税務署から突っ込まれたら面倒なので)。

 このような税制から、子供には後を継がせられないとなってしまう零細工場や、我々個人工房などがほとんどです。要するに技術を追求していたら、食べていけないのです。

 だから技術が日本に残らなくなってきたのです。

 医者や政治家の子供が後を継ぐのは、やはり何らかのメリットがあるからです。それは金銭的なもの、社会的信頼度などです。

 

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