今日いらしたチェロのお客様は、以前に私の工房で良いチェロ弓を時期をずらして2本も購入してくださった熱心な方なのですが、興味深い話をしてくださりました。
それは先日、アマチュアのコンサートに海外のチェリストをソリストとして招いたそうなのですが、ついでにちょっとした演奏の講習会もおこなったそうなのです。
そこでの話です。
その演奏家によるチェロの演奏は、横で聴いていても弓先までしっかりと圧力が残っている素晴らしい演奏だったそうなのです。そして私が興味深いと感じたのは、その講習会で、その演奏家が「圧力を持続しながら駒寄りをしっかりと弾く」という事を具体的にアドバイスしていたという事でした。
そして私のお客様の弓を、「良い弓だ」と褒めてくださったそうなのです。
すなわち、このソリストは私が主張している内容と全く同じ事を実践しているのです。
私が30年間も同様の主張をしてもなかなか信用してもらえないのですが、このような演奏家が言うと、簡単に信用してもらえるのです。そのくらい、我々技術者(職人)は信用されていないと感じてしまいます。
さらに興味深い話は、その演奏家が「このようなしっかりとしたボウイングをしている人は少なくなって、最近では指板寄りをスラスラと弾く人が増えてしまったが・・」みたいな事も言って(愚痴って?)いたそうなのです。
これに関しても、私の感想と全く同じでした。
ようするに、音よりもパフォーマンスに走っている安直な奏者の方がウケてしまっている現状なのです。映像ウケです。
色々話し込んでいる内に2時間も経ってしまいました。
関連記事:
- チェロのお客さまとの雑談で
- チェロのお客様と、カザルスの無伴奏チェロ組曲の聴き比べ
- 良いチェロの音って、ちょっと多くの方が満足しているチェロの音とは違います
- チェロの調整で、狭い工房はチェロケースでいっぱい
- 演奏家の言うことを全て鵜呑みにしてはいけませんよ