私がこれまでに何度も書いていることですが、弓の性能は「竿」の性能が命です。具体的に書くのならば「竿の腰の強さ」、突き詰めて言えば「竿の材料の良さ」こそが弓の性能を司るいくつかの要因の中でも、最も重要でありそしてかなりのパーセントを占める要因なのです。

 弓の材料の性能を調べる計測器具はこれまでにもありました。それは材料であるフェルナンブコ材の両端に器具を装着して、片側からパルス振動を与えて、もう片側のセンサーからそのパルス信号の到着時間を測定するという器具なのです。これによって「材料の密度」がわかるという触れ込みの測定装置です。しかし実際にその器具で、フェルナンブコの性能が判別できたかというと、??でした。なぜなら、フェルナンブコ材の腰の強さは、単純にその密度には比例しないからです。

 全く別の方向からのアプローチとして、製品となった弓の性能を調べるという方法もあります。これは弓製作者には意味がありませんが、我々のような弓取扱業者や演奏者にとっては、完成した弓を客観的に調べる方が現実的です。
 実際に私が弓竿の性能を調べるときには
 1. 製作の精度
 2. 弓の重さ
 3. 太さ
 4. 手で竿をしならせたときの抵抗感
 5. 毛を6mm位に張った状態で、弓の中央でクイクイと圧力をかけて、その抵抗感を感じる
 6. 実際に演奏する
などの方法で弓の性能を感じ取ります。

 この中で特に客観的に測定できるのが「2. 弓の重さ」と「5. 毛を6mm位に張った状態で、弓の中央でクイクイと圧力をかけて、その抵抗感を感じる」です。

 現在私はフォースゲージを購入して、「5.」の計測をする計画中です。実際に私が感じていた「腰の強さ」が数値的に比例しているのか?、または果たして私の感覚自体が正しいのか?、またはそれらの数値が弓の性能(もちろん弓の性能はそれだけでは語れません)を客観的に表現できるのか?などを調べてみるつもりです。

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 ああ、時間と予算が・・。ゆくゆくは、業務用マイクロフォンに1本ごとに実測周波数特性グラフが添付されているように、弓にも「変位と力の特性グラフ」を添付できたらとは考えているのですが、時間的にも、予算的にも、なかなか・・。今回はその「一歩」なのです(このたった「一歩」でも、アイデアを考えてからもう15年は経ちます)。

 

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