以前に私の工房で、良い楽器や良い弓を購入されたお客様と、「あの時思い切って購入して、良かったでしょう?」という会話をします。

 全てのお客様は、購入されるときには迷いがあったはずなのです。なぜなら楽器の場合には何百万円とか、弓の場合にでも何十万円とかの大きな金額の話になりますから。

 しかし私を信用してくださった方は、その後「あの時思い切って購入して良かった」と思ってくださっているはずです。なぜなら、物が違いますから(私はラベルを販売しているわけではないので)。

 楽器や弓を思い切って購入して、5年とか10年とかって、あっというまに経ってしまいます。それはすなわち、それだけの期間を、理にかなった道具で練習できたということでもあるのです。

 その期間、勘違いした道具で練習していたらと思うと、ゾッとしませんか?

 重要なのは、物理的な「理」であって、「感覚」ではないのです。なぜなら、感覚なんてその時の思い込みだとか、情報操作でいかにでも変化する怪しいものだからです。

 

注:安くて都合の良い楽器や弓はありません。

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