私は少し前のブログ記事に、「ピラストロー社の弦は高すぎる」と批判的な事を書きました。
しかしそれでも音質的なメリットも大きいので、私はチェロの調整でピラストロー社のパーマネントとかエヴァピラッツィで調整することが多いです(最近はエヴァピラッツィGoldとかも試しています)。
一方、ラーセン(またはヤーガー)+スピロコアという組み合わせの調整もあります。この弦の組み合わせのチェロもとても多いです。以前にはこの弦の組み合わせが、チェロの定番調整でした。ピラストロー社の弦と比べて、価格がとても安いのも大きなメリットです。
しかしそれでも、私はパーマネント弦とか、エヴァピラッツィ弦で調整をすることが多いです。
エヴァピラッツィ(またはパーマネント)弦と、ラーセン+スピロコア弦の違いは、弦の剛性にあるのです。だから発音特性が大きく異なります。
簡単に説明すると、スピロコアの低弦は発音が鈍く、瞬間的に音が擦れます。だからいかにもスチール弦ぽい、カサカサした音になります。
それに対してエヴァピラッツィ(パーマネント)弦の低弦は弦の剛性が低く、さらに弦も細いので、弦の発音が素直なのです。だから音に艶がでます。
しかし、この違いは弓の性能が高い人にしか感じる事が出来ません。多くのチェロ奏者の弓の性能はそこそこなので、どうしても指板寄りを軽やかに(弓のスピードで)演奏しているのです。このような弓を使った演奏の場合には、私が主張する「艶」という意味が判らないと思います。
「性能の良い弓」+「性能の高いチェロ」+「理にかなった調整」+「理にかなった演奏(ボウイング)」のベクトルが揃って、初めて良い音が出て、その差の意味も理解できるからです。
そんなわけで、私の工房で高価なチェロ弦を毎回張り替えていらっしゃるお客様へ、どうか私の技術を信用して、その価格(弦の価格の高さ)を納得してください。
関連記事:
- 弦の張力データにチェロ弦を追加
- エヴァピラッツィ弦は早めの交換をお勧めします
- チェロ弦の交換が一年周期の方でも、半年ごとにいらしてください
- 傷んだ弦を使い続けると指板が傷みます
- エヴァピラッツィGoldはなぜ高価なのか