私の工房に初めていらした方で、話の流れから「良い弓とは?」って話になって、私の工房の在庫の弓をお見せすることがあります。

 しかしほぼ全ての方は、試奏しても微妙な顔をして無反応です。

 おそらく心の中では、「これのどこが良い弓なの?」って呆れているのかもしれません。特に演奏が上手な人ほど(例えばプロの奏者とか)その傾向があります。

 というのは、ちょこっとだけ試奏しただけでは(補足)、人間は自分の価値観の判断しかできないからです。要するに、自分のこれまでの価値観でだけ物事を判断してしまっているのです。
 その大前提は、「自分は正しい」という、自己肯定の考え方、または行動によるのです。

 だから私は「自分で自分を超えることは出来ない」、「信頼できる専門家に紹介して貰って、それを信じるべき」と主張しているのです。

 さて、私の工房にて弓の試奏をして頂く場合には、まず最初に「弓の性能の理論」という考え方を、1時間もかけてじっくりと説明します。要するに、脳に「科学的な理」を理解させることから始めるのです。

 そうすると、自分の凝り固まった間違った考えの壁を破りやすくなるのです。詳しくは、この場では語れません。

 いずれにせよ、初めて私の工房にいらした方がちょこっとだけ弓を試奏しただけでは、「絶対に」良さは判りません。だから私の工房にて「以前にちょっとだけ弓を弾いたことがあるけど、イマイチだった」という方は、是非ともきちんとした説明を受けてから試奏してみてください。

 本当に良い性能の弓で演奏する自分の(楽器の)音に驚かれますよ。これはたくさんのお客様からの実際の声です。

 

補足:「ちょこっと試奏しただけでは判らない」というのは試奏時間の話ではありません。すなわち長期間借りて試奏したら良い弓が判るようになるわけではないのです。長期間借りたら、その弓に慣れてしまうだけです。

 重要なのは、脳が弓の性能の理論を理解したかどうかなのです。要するに、演奏には座学が重要なのです。

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