つい先日、私の工房にてヴァイオリンを購入してくださった方は、もうずいぶん長く私の工房に通われている常連さんです。演奏も上手な方です。
 ところが弓の性能が低くて、私は工房にいらっしゃる度に、「せっかくお上手なのに、あなたの演奏技術がもったいない」みたいな内容を言っていました。

 それで2年前に、私の工房にて良い性能の弓を購入されまして、案の定、音は激変しました。もちろん、私からしたら当然の結果なのです。

 さてここからが本題です。

 弓が良くなると、楽器の音の本質が見えてくるのです。嘘に思われるかもしませんが本当に、見えてくるのです! それで今回の楽器の試奏においても、まずは楽器の作りの良さを眺めて、次に音の出方を確認して、あっという間に「良い楽器ですね!」と、決定です。弓の性能が高いから、楽器を見極めるポイントが瞬時に理解できるのです。
 以前、カントゥーシャ工房で働いていたときも同じ事を感じていました。上手な人(有名な演奏者とか)ほど、試奏して瞬時に決定しますが、音大生とかは時間をかけて弾きまくって、迷いに迷うのです。それは「楽器の性能のポイント」を理解していないからなのです。

 試奏にはあまり時間をかけない方が、良い楽器を選べることができます。試奏に長い時間をかけると、本質とはかけ離れた要因の方をついつい考えてしまい、変な楽器を選びがちなのです。

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