楽器を演奏する方にとって、そして我々技術者も、良い音を追求することが目標の一つです。

 どうやったら良い音が手に入るのか?

 それは、数学の問題を解くのと似ているのです。すなわち、めくらめっぽうに計算しているのではなく、「こういうパターンの時には、こういう定石を使って」とかの効率的な解き方が存在するのです。そしてさらに、その定石の解き方だけでなく、その後に計算間違いをしないで確実に計算を続けるという行動が必要になります。

 またはルービックキューブを合わせる行動に似ていると言っても良いかもしれません。ルービックキューブを適当にクルクル回したとしたら、合わせることができてもせいぜい2面とか3面です。6面を合わせるためには、解くための定石を理解したうえで、それを確実に行う必要があります。

 それが「技術」なのです。その技術にはもちろん理論も経験も含まれます。これは楽器の調整だけにあてはまる事ではなく、楽器の購入(または仕入れ)などにおいても同じです。

 多くの演奏者(それも自分に自信のある方)は、自分で判断したものこそが自分に一番合っていると思い込んでいますが、本当の技術者と本当の付き合いを続けてみてください。求める「大きな物」は、自分の価値観のもっと外側にある(あった)ことに気づくでしょう。

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