先輩弟子の林さんはもちろんのこと、まだ入門して1年の初級者弟子の川口君にも、私は良い道具(高価です)を購入させています。私が使っているのと同じか、または場合によってはそれ以上の良い道具を購入させるのです。

 なぜか? それは、良い道具の方が、同じ作業を行った場合や、同じ手間をかけた場合、より良い結果が生まれるからです。修得するための効率が良いからです。

 職人として高度な技術を追求することは、そう簡単に行えるものではありません。短い人生の中の、貴重なほんの一期間を効率よく使って、技術を修得する必要があります。それを実行しようと思ったら、ちょっとえげつない言い方をするのなら、「時間を金で買う」わけです。

 プロだから良い道具を所有しているわけではありません。高度な技術を追求したいからこそ、良い道具に「すがっている」とも言えるのです。

 同じ考え方は、プロの演奏者やプロを目指している演奏者は当然のこととして、趣味を楽しんでいるアマチュア演奏者にも言えます。なぜなら、「残り時間が、もう無い」のは皆同じだからです。

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