私がドイツに滞在していたのはもう20年以上前にもなるので、今のドイツの自動車交通事情と私の感想が完全に一致しているかどうかの保障はありませんが、たぶん基本的には同じと思いますので、私の感想を書きます。
私がドイツに渡って、最初に感心したのは、自動車関連の全てのレベルが日本よりもかなり上だったということです。最初に目に付いたのが、快適な道路環境です。アウトバーンはもちろんのこと、町と町とを結ぶ普通の一般道さえも、素晴らしい道路環境でした。
しかし、徐々に見えてきた本当の凄さは、運転マナー、または自動車の社会的な責任所在という点だったのです。さすが自動車の本場の国は、自動車そのものが優れているだけでなく、環境(道路)、そして運転のモラルまで違っていたのです。
例えば、私がドイツに渡って直ぐの頃、町の中の小さめの道(よく日本にあるくらいの大きさ)で、お年寄りの横を普通に通り過ぎたのです。私はスピードも出していないつもりでしたし、歩行者との距離も(日本での感覚で)取っていたつもりでした。
ところが、車が横を通り過ぎるときに、そのお年寄りが凄い表情をしながら振り返っているのが見えたのです。私は、「こんなに距離を取っているのにバカじゃないの?」と思ったのです。もちろん、日本では、ごくごく普通の感覚ですよ。
しかし、その後に徐々にわかってきましたが、それは非常識な運転だったのです。
また、別な事でも感心したことがあります。正直言いまして、当時は感心したと言うよりは、恥ずかしながら「バカじゃないの?」と思ったくらいです。それは、ミッテンヴァルトの細い山道(曲がりくねってはいますが、普通に片側一車線の道です。日本では一般的な大きさの道路です)なのですが、遅いトラクターがトロトロ走っていると、その後ろに、ゆっくりと車が列をなして走っているのです。無茶な追い越しはしないのです。
なぜこのように、運転のモラルがきっちりと守られているかは、ドイツで1年も運転していると直ぐに理解できます。それは交通法規も含めた自動車社会に本音と建て前が無い(少ない)からなのです。
例えば日本の場合には、速度表記をきっちり守っている人は少ないです。人によっては「+10キロ弱くらいがベスト速度」くらいに思っている人も多いのではないでしょうか?事実、私も、学生時代に運転免許教習所での仮免道路運転中に、教官から多少ぼかした感じで「車の流れに乗って」と説明されたことがあります。
また、信号機でも、黄色が出たからと言って、急に止まる人は少ないです。
初期の頃に、このような日本の常識でドイツで運転して、私は何度か痛い目に遭いました。例えば山道の制限速度が30kmと表示されているところで、それよりちょっとだけオーバーした速度で走ったら、危ない思いをしました。その制限速度表記って、本当の意味で「30km以下で走らないと危ないよ」という意味だったのです。保険分は入っていないのです。
また、ドイツでは町と町とを結ぶ国道は100kmで走れるのですが、小さな町に入った途端、制限速度が一気に30kmとなるのです。もの凄く減速しなければなりません。私はこのような場所で、勝手に「40kmくらいに落とせば十分だろう」と思って走って捕まったこともありました。恥ずかしいです。
また、これまた恥を告白しますが、信号機が黄色になった瞬間に交差点に進入して、「パチリ」と写真を撮られて、違反切符を切ったこともありました。ドイツでは「黄色=止まれ」に等しいのです。
このように日本の常識(「おまえのは日本の常識では無いと」いう声が多いのでしたら、それは素晴らしい事です)、とドイツの常識とでは大きな違いを感じました。
その根本にあるのが、「本音と建て前」です。日本は何事も「本音と建て前」ばかりです。様々な価値観も含めて、国際化の流のなかで、それで良いのでしょうか?
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