これは演奏者側の話ではなく、我々技術者側の話になるのですが、しかし基本的な考え方は演奏者側にも当てはまると思います。
楽器の製作や調整、または仕入れなどにおいて、どのように音響的な追求をするのかというのが、我々の仕事であり、またその差が腕の見せ所とも言えるのです。
私の場合には、楽器の全体像は最初の段階では考えないようにします。技術的素人(例えば取材とか)には、「楽器の全体像をバランス良く考えながら・・」というと受けが良いし、説明が簡単になるので、あえてそのような説明をすることもあります。
しかし正確には(専門的には)、「楽器の全体像」とはあまりにも大きすぎて、または抽象的すぎて、とくに初期状態では捉えられないのです。だから、あえて、楽器の全体像には拘らないのです。
それではどうするのか?
それは楽器(音質)の要素を小さいブロックに分けて、その小さなブロックの中の音響的なモデルを構築し、完結するのです。プログラマーが、頭からプログラムを書いていくのではなく、最初に小さなサブプログラムを作っておいて、それを各所で引用することで大きな流れを構築していくのと同じです。
何が言いたいのかというと、重要なのは「小さな範囲のモデル化」なのです。楽器の全体像を抽象的に語った方が、素人受けは良いです。しかし、それではあくまでも個人の感覚論にしかすぎず、応用が利かないのです。
技術者を目指している、または勉強中の若い人にアドバイスするとしたら、「ポイントになる部分を画として描けるか?」という事です。常日頃から、メモ帳にヒントになるような画を描く事が重要です。もちろんラフスケッチで十分です。
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