時々、「知人から長く使っていない楽器を借りることになったので、調整して下さい」という依頼を受けることがあるのですが、この手の話って結構難しいのです。
 楽器をわざわざ購入しなくてもよいので、安上がりに済ませられると考えていらっしゃる方も多いかも知れませんが、下記の理由によって、結果的に「損」してしまうかもしれません。

1.そもそも程度の低い楽器か、状態が良くない楽器を借りることが多い。
2.人の楽器なので、どの程度手を加えて良いかが分からない。
3.「2.」の理由によって、修理調整をほとんどしない状態で使う事が多い。
4.他人の楽器にあまりお金を掛けたくないという心理から、修理調整をほとんどしない状態で使う事が多い。
5.もともと、「あまりお金を掛けたくない」という心理から、楽器を借りているので、「お金を掛けてでもより良い音を」という追求心が生まれにくい。これはすなわち、演奏技術の向上心にも直結します。
6.修理調整をする技術者側も、他人の楽器に下手な操作はできないので(最悪、後日トラブルに巻き込まれてしまう)、どうしても消極的になりがち。
7.上記の理由から修理調整に通う頻度も少ないため、技術者や楽器店との様々な「縁」も生まれにくい。

 このような理由などから、どうしても「演奏の上達度」、「向上心」、「好奇心」などが効率よく得られにくいものです。

 「自分自身でお金をかけて、その分、いやそれ以上の『元を取る』」くらいの気持ちが必要です。それが技術の上達のもっとも近道です。

 同じ事は、「演奏の先生(レッスンを受ける)」についても言えます。独学の練習では、結局は損します。レッスンにつくとそれなりの出費はありますが、必ずそれ以上のものを知らないうちに手に入れられるからです。
 「損して元取れ」です。いや、元以上のものを取れば、それを「得」と言えるのです。

後日補足
 一年ごとに買い替える子供用の分数楽器の場合には、話はまた別です。

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