昨日にご自分のお子さん用にと、私の工房にて良い弓を購入された方から、こう質問されました。

「このような良い弓を使っていたら、子どもは無意識の内に正しい奏法が可能になるのでしょうか?」

 難しい質問です。「無意識の内に」という部分が難しいです。

 おそらく、いくら(真の意味での)良い弓を購入しても、「無意識に」その性能の物理的な意味を理解して、理想的な正しい奏法を実現できるのは厳しいと思います。

 なぜなら、プロの演奏者のような上手な方でも、勘違いしたままフニャフニャな弱い弓を良いと思って、自信を持って勘違いした演奏をしている人がたくさん居るからです。すなわち、いくら高性能の弓を手に入れても、自然に(無意識に)理想的な演奏(ボウイング)にたどり着くという事は厳しいと思います。

 具体的には、きちんとした「弓の性能の理論」を理解して、その理論に則った行動(=レッスン)を行わなければ、私の主張する「高性能な弓」は理解できないどころか、単なる「強すぎて、弾かれてしまう、使いにくい低性能な弓」と真逆な感想を持ってしまうはずだからなのです。

 結論になりますが、真の意味での高性能な弓を所有していることが必須であり前提ではありますが、それと同時に「弓の性能の理論」の理解と、実行も条件となります。大人の場合には、これを自分自身で追求できるのですが、子どもの場合にはそれは不可能なので、先生がそれを理解できているかどうかが大前提となるのです。

関連記事: