先週、静岡県の清水まで「削ろう会」を見に行ったということを書きましたが、その続きです。
この「削ろう会」は鉋の薄削り大会がメインなのですが、それ以外にも実技講習会や実演なども行っています。さらに、今回実際に見に行って初めて知ったのですが、全国から鍛冶屋さんが行商にきて現物販売をしているのです。
高価な刃物や、珍しい道具などもたくさん揃っていたのですが、私は現金をほとんど用意していなかったので、それらの道具を購入することは出来ませんでした。「重延」の鉋も売っていました(値段は付いていなかったので、いくらで売っていたかはしりませんが)。もっとも、もう3挺持っているから、これ以上はいいのだけれど。それ以外にも、もう数が少なくなっている有名な鍛冶屋の刃物もいくつも売っていました(10万円前後)。
道具屋をまわっていて興味深かったのが「砥草」でした。日本の家具職人が伝統的に使ってきた、天然紙ヤスリみないなもので、草の茎を裂いて開いて、茎の内側についているギザギザ部分で木材を磨くのです。
この砥草はとても優秀です。例えば、現在普及している紙ヤスリでは、木材を一旦磨いてしまうと、紙ヤスリの表面に付いている細かな石の粒が取れて、木材表面にこびり付いてしまうのです。こうなってしまうと、その後で木材を鉋とかノミで加工したときに、刃物がその石粒のために欠けてしまいます。しかし砥草は天然の草の茎なので、いくら砥草で木材を磨いても石粒などの異物が木材表面に残りません。そのために、後で刃物を使って加工しても、刃物が傷まないのです。実に素晴らしい性能です。そしてそのような道具を考えついた先人達の、目の付け所に感心してしまいます。
補足:上写真は弟子の林さんが購入してきた(現地では別行動でしたが、目を付ける物は同じだったようです)砥草です。砥草の茎を裂いて、並べて革シートに貼り付けた製品です。ちなみに、この砥草を販売していたのは洗心工業製作所です。