「昔の人は、コンピュータも計算機もない時代に、よくこんな技術を考えついたものです!」と、不思議がる人がいます。

 しかし、私は全然不思議に感じません。

 というのは、昔の技術者、職人は、長年にわたっての数えくらいないほどの失敗を積み上げているからなのです。その上での成功とか、優れた技術なのです。

 後世の人は、成功部分だけを取り上げます。しかし、成功は1,000の内の一つでしかありません。残りの999は失敗または試行なのです。

 例えば、世界的な博物館とか美術館に陳列されている物、または楽器でいえば”名器”って、そのごくごく僅かな成功例でしかないのです。だから、その僅かな成功例だけを観察しても、「昔の人はよくもまあ、こんな凄い物を・・」としか思えないのです。
 しかし、本当に重要なのは、数多くの失敗例とか駄作を観察することです。それによって、そのごく一部の成功例を理解できるようになるのです。

 999の失敗は1の成功と同じくらいの価値があります。本当は、失敗作、または駄作の博物館、美術館があってもよいくらいなのです(民族博物館がそれに近いかもしれません)。それらこそが世界を作っているからなのです。

 

 失敗とか回り道を恐れる人に、何が出来るでしょうか? また教育とは、999の失敗を上手に体験させる場でもあるはずなのです。しかし、現状のそれ(いわゆる受験教育)は真逆です。偽善教育です。

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