つい昨日の事ですが、ある若いヴァイオリン奏者から、「(仕事上)補助的に使っている安い楽器で弾いていると頭が痛くなるが、・・」という質問を受けました。
確かにその楽器は量産楽器で、高い楽器ではありません。しかしその楽器は量産楽器とは言え、作りはまともな部類ですし、私がきちんと調整しているので決して変な雑音とか、キンキンした高倍音が出ているわけではありません。弾きやすさ(寸法的な基本調整)だって、私が手をかけて調整したので、そんなに悪くはないはずです。
それではなぜ頭が痛くなるのか? 私もちょっと考えてみました。
一般的には、弾いていて頭が痛くなる楽器の要因として、下記のものがあげられます。
・雑音が酷いか、キンキンした高倍音が顕著な楽器。
・寸法的な基本調整が全く為されていないので、弾きにくくて弾き疲れしてしまう。
・重い楽器。
ところが今回の話題の量産楽器は、そうでもないのです。それで私が出した結論としては、
・メインで使っている良い楽器と比べて、倍音が素直に出ていないため(ようするに音が良くないため)、自分がいつものように演奏しようとしているのに、実際の音と自分の行動が食い違ってしまい、それが脳に何らかのストレスを与えてしまっている。
・発音が若干鈍いため、弾き疲れしてしまって、頭が痛くなる。
こんなところだと思います。それで私も「まあ、そんなものですよ」と答えておきました。
今回は普段良い楽器を使っているヴァイオリン奏者が、低いグレードの楽器を使って「頭が痛くなる」という症状が出たという事例でしたが、これはすなわち全く逆の事も言えるのです。
(値段ではなく)楽器として質の低いもの(量産楽器という意味ではありません。高価な楽器でもそういう楽器は多いです)を、使っている方は、それが当たり前と思って弾いているのです。すなわち、慣れてしまっているので、先のヴァイオリニストのように頭も痛くならないのです。
しかしそれを良い楽器(良い音の楽器)に買い替えることで、まるで頭の中が澄み渡ったように、演奏することが可能になるかもしれないのです。もっと具体的に言うのならば、「音のツボ」が明らかに見えてくるのです。今までの苦痛(気がつかなかっただけの)から、解放されるかもしれないのです。
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