私は様々な測定機器、観察機器を自費購入して、弦楽器の様々な疑問に対して研究しています。自慢になりますが、弦楽器専門家(アマチュアは除く)でここまでやっている人は、世界的にも珍しいと思います。

 もしも私がインチキ商売人(詐欺師)だったら、測定したいくつかの専門的計測グラフを並べて、「楽器の秘密は、この部分に・・」とか、「弓の性能は、この弓竿の振動ポイントを見ると、一目瞭然です」とか、主張することでしょう。

 そして、それに関して、的確な反論をできる人は一人も居ないと思います。

 

 しかし、私は正直だから言います。

「調べれば調べるほどに、難しさ、複雑さばかりが見えてくる」、と。

 だから私は、弦楽器に関して何も判っていませんし、見えてもいないのです。そこの部分が、「見えてきた部分」です。 我々の同業者や演奏家で、感覚論だけでお気軽に音色を論じることが出来る人達が、ある意味羨ましく感じる事さえあります。「知らないのが、一番お気楽で幸せなんだなあ」と。

 そんな中、判ってきたとこは、弦楽器に秘密の核心部分はないという事実です。楽器(物質)と環境(物質)、演奏者(生物)、聴衆(生物)の複合的な複雑な要素の絡み合いからできている、「総合的性能」こそが本質なのです。

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