ここ数年間でたくさんの楽器を扱ってきました。私が仕入れて販売する楽器はもちろんですが、お客さまの楽器も、それら全ての楽器がそれぞれの特徴や魅力を持っています。だから、順序とかを簡単に付けることは出来ません。

 しかし、強いて「一番驚いた楽器は何か?」と言えば、ダントツにカントゥーシャ作のチェロです。

 私のチェロという楽器の価値観を越えていました。

 もちろん私はこれまでにもカントゥーシャ作のチェロを作ったり、弾いたりしていたので、ある程度の予想はしていました。しかし、それを越えていました。

 強いてその音を例えるのなら、「純水」です。一見、味がないのです。

 しかし、その向こうに見えてくる物があるのです。チェロの演奏の上手な人なら、さらにその「向こう」を垣間見ることが出来るのだと思います。

 補足になりますが、その「純水」とは、ペットボトルに入っているような少量のものではなく、泉のような、またはスーパーカミオカンデに満たされているような、豊かな水です。

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