NHK BSの番組で、「名アルバムを、オリジナルマスターテープで聴き直す」というようなとても興味深い趣旨の番組があるのです。荒井由実の「ひこうき雲」とか、井上陽水の「氷の世界」とかもありました。ちょっと前にはYMOの「Solid State Survivor」でした。

 当時のレコーディングエンジニアとか、演奏者達も一緒に集まって、「ここはどったった」とか、「こうだった」とか、色々な裏話とか思い出話をするのです。

 そんな中、必ず「凄いなあ。今はもう出来ないなあ~」って感想がでるのです。若さ故にできた感性とか、努力とかって確実に存在するのです。

 そしてそのマルチトラックテープから出てくる音の瑞々しさと言ったら、まるで最近レコーディングしたかのようです。

 私は当時YMOにはまっていたわけではなく、それどころか「この電子音の何が良いのだろうか?」ぐらいにしか思っていなかったのです。学生時代によく遊びに行っていたオケのF先輩の部屋でよくこのYMOが流れていたので、私にとってはその先輩の思い出(その部屋でオーディオのこととかバイクや車の、色々語り合ったものです)と重なります。

 当時はそれほど思い入れが無かったYMOですが、今あらためて聴き直してみると、なんて先進的で凄い音楽だったのだと、今さらながら感じました。そして、当時の自分の身体の中にもYMOの音楽が入っていたのだという新鮮さにも気づいたのです。

 中古で購入したレコード(2枚で1,000円でした)の盤面を掃除しながら、気づきました。レコードの溝が模様状にみえるのです。すなわち、定期的なリズムと円周の長さが微妙にずれることで、モアレが発生したのです。音が見えるなんて、なんて新鮮なのでしょう! 昔は当たり前のことだったのに。

 そしてその音の高音質なこと、驚きます。もちろんCDより音が良いとか、そういうくだらない議論ではなく、「単なる物理的な溝から音が出る」という不思議さと感動です。そういえば、音ってそういう物理的な物質から生まれるわけですから、不思議なことではないのですねよ。音楽はデジタルメディアから出てくるものだと勘違いしていました。

 我々は現代の電子社会、デジタル社会に染まってしまって、マクロの眼を見失ってしまったのです。ミクロこそが未来だと勘違いしていたのです。しかし、本質は「どちらにも」です。

 

 

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