私は「レコードが凄くて、CDは悪い」とか、そんな単純な事だけで音質の評価はしていません。
弦楽器に対するそれと同じで、「その辺に出回っている安っぽい情報に流されず、いかに冷静に、客観的に音質を把握するか」という事を常に意識しています。
だから全てのレコードの音が優れているとは思っていません。
またレコードの再生装置でも音質は全く異なってきます。私はELPレーザーターンテーブルを使うようになって、レコードの音質の凄さを初めて知ったのです。それを知る前までは、レコードの音は「柔らかい」と思い込んでいました。
話を戻しますが、70年代(~80年代初期)のレコードって、レコードの円熟期です。80年代前半にCDが発売されて、レコードは過去の遺物みたいになってしまっていましたが、実は今、あらためてレコードの音を聴き直してみると、円熟期のレコードの音って凄かったのです。これはクラシックだけに限りません。
先日、オーディオに詳しいお客様に、松山千春「起承転結」レコード(もちろん発売当時の版)をお聴かせしたのですが、その音に驚かれていました。
おそらく当時の録音エンジニアとスタジオ演奏者の、音質に対する意識が高かったからだと思います。レベルが高かったと言った方が正しいかもしれません。これは、「レコーディング」という行為が、そのくらい特別なものだったからだと思います。
また、我々聴く側も、「一枚のレコード」というものに対して、とても大きな価値観を持っていました。「一枚のレコード」が貴重だったのです。だから、製作者側も、購入する側も、共に真剣だったのです。
当時のレコードからは、それを感じます。