演奏者の容姿とそこから出る音には、100%とは言えないまでも、ある程度の関連性はあると感じています。

 恰幅の良い「おじさん」の演奏する音は、柔らかで伸びの良い音がします。一方、スタイルの良い美女の演奏家の音って、ちょっとキツい音がすると思います。

 この感想は、私の工房いらっしゃる女性ヴァイオリン奏者の方も全く同じ感想を持たれていましたので、おそらく間違ってはいないと思います。

 これは演奏者の性格とか、弓の性能とかの要因も大きいのですが、それ以外に「指の太さ」とか「腕の重さ」とか「筋力の強さ」とかの身体的な違いから来る要素が大きいのです。

 細身の女性演奏者は、どうしても筋力が弱く、そして腕も細いです。だから「腕の重さ」が乗りません。だからどうしても、力で発音しようとするのです。だから音がきつめなのです。

 さらに、恰幅の良い演奏者(男性に限りません)と細身の演奏者とではヴィブラートにも違いが出ます。体格の良い演奏者の方が、楽器を揺らさないヴィブラート奏法をしていることが多いような気がします。おそらく、質量の大きな腕を振り回すことは慣性の法則として厳しいので、自然と腕を振らないで手首と指先で効率の良いヴィブラートを行っているのでしょう。

 それに対して、細身の演奏者は指の肉付きも少なく、弦をきっちりと指の骨で抑える感じになります。だから音程感が鋭く、繊細な演奏が可能になる反面、ヴィブラートに自然さが無くなるというか、「ヴィブラートをかけている感」が大きくなってしまうのです。指が細く元々の力が弱いために、逆に弦を意識してカチッとさえつける奏法が故に、ヴィブラートも恰幅の良い奏者のそれと比べると多少固さを感じさせます。また、細身の腕を一生懸命動かそうする演奏のため、楽器の縦揺れが生じてしまって、そういう特徴のヴィブラートになってしまうのです。

 もちろんこれは「それぞれの特徴」の考察の話であって、どちらの演奏が優れているとかの話ではありませんので、誤解の無いようお願いいたします。その証拠に、細身の女性名演奏家は数多くいます。

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