SACDはCDよりも音が良いのか?

 私が学生の頃の「オーディオおたく」だった頃にこの質問を受けたら(もっともその頃はCDがようやく出回り始めた頃で、SACDなんて影も形もありませんでしたが)、喜んで「SACDって凄いですよ!」って答えたことでしょう。

 ところが私が「楽器の仕事」に就いて、毎日「良い音とは何か?」を自問自答していて、さらに歳を重ねてたどり着いた結論があります。

 「音の品質とは小数点みたいな感じ」

 すなわち、小数点何桁までを真に必要としているのか? なのです。

 これまで何度も例えた事ですが、円周率を小数点第10桁まで計算していたら、なんだか「出来る人」になった気持ちになれます。しかし、小数点の本質は最初の「3.1」くらいにほとんどが含まれていて、真に小数点第10桁を必要としてる計算以外においては、どうでもよい数字なのです。それどころか、計算の邪魔になる数値でさえあります。

 音楽でも全く同じです。周波数帯域の中のどの領域に「音楽の本質」が含まれているかが重要であって、小数点10桁の部分は、何を求めているかによって価値判断が異なってくるのです。

 SACDの方がCDよりもスペックが高いことは間違いありません。しかし、それがイコール、音が良いとは言い切れないのです。なぜならば、音楽の本質部分はSACDにもCDにも、それどころかMP3にも”ほぼ”入っているからです。

 だから音響的には低音質のサウンドからも、感動を受けることが出来るのです。

 それならば「音質は何でも良いのか?」というと、半分は「その通り」で、半分は「いや、そんな事はありません」です。

 スペックおたくになることは「木を見て森を見ず」になってしまいますが、より高品質なスペックは、大は小を兼ねるで、意味があるかどうかは別の話として、音質的に悪いことは無いからです。

 さて、最初のSACDとCDの質問の私の答えです。「SACDはCDよりも音が良いのか?

 「オーディオマニア以外には関係ない。CDで十分」です。ただ、大きな世界を見た人にしか、現在の世界は判断できないのです。すなわち「CDでも十分」と言うためには、CD以上の世界を体験して始めて言えるのです。だから、そういった意味で「より良いものを求める努力」は常に必要とも言えます。

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