本屋さんに立ち寄ったら、オーディオ雑誌「stereo」にカセットテープの付録が付いているということで、ついつい懐かしくて購入してしまいました。

 新品のカセットテープを購入するのって(カセットテープ自体を購入したわけではないのですが)、いったい何十年ぶりの事でしょうか?

 現代の技術で、可能な限り高性能な”maxell UD”テープを復元したそうです。

 ところがその開発記事を読んでいて、「やっぱり・・・」と思ってしまいました。現代の技術で真剣に作ったこのテープでも、「それでも、当時のUD1には劣る」との事です。

 私は、80年代の中古オーディオ機器とかをいくつか再購入して使っていますが、当時の製品は今見直してみても、手間が掛かっていて素晴らしい作りをしています。感心します。

 我々、「技術」は時代と共に常に進歩していると思いがちです。しかし、技術って、一旦途切らしてしまうと、取り戻すのは困難なものなのです。常に、手間とお金と人材をかけて、技術を守って、はじめて良い製品が確保できるのです。

 最近の日本企業に薄いのは、この技術に対しての基本的な考え方です。「コスト」や「経営」の事ばかりで、「技術(基礎研究も)」や「人材」にお金をかけているでしょうか? いや、企業の問題ではなく、国家としてです。

 これは我々弦楽器関連も全く同じです。お金にならない事、例えば弟子を育てる事とか、技術研究にお金をかけるとか、道具にお金をかけるとかこそが重要なのです。それが未来に繋がるのです。

 これは製造業側だけの話ではありません。みなさんユーザー側が、そのような「良い製品」を作っている側に対して、お金を払って育てようとする気持ちが必要なのです。「良いのは判っているけど、ちょっと高いから~」って言って、安かろう悪かろうの製品を買っていては、明日にはその技術は無くなっているかもしれないのです。
 事実、そうして廃業してしまう優秀な製造業者は、毎日出ているはずです。

 皆さんが、日本の技術への「たにまち」になってください。

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