これまでに何度も書いていることなので、「またか」と思われる方も多いと思いますが、なぜ何度も書くかというと、理解できていない人がとても多いからなのです。
ほんの一例ですが、以前に工房に調整に来た楽器は、おそらく皆さんも耳にしたことのある製作者作の、比較的新しい楽器でした。製作の作り(技術)は、私がぱっと観た限りとても上手です。
音を出すと、一見とても鳴りが良いのです。発音が良いのです。
・・・ここなのです。このように、多くの方は、「ラベル(知名度)」と、「鳴りの良さ、発音の良さ」で良い楽器と判断してしまうのです。
それのどこが悪いのでしょうか?
私が言いたいのは、「それは楽器の表面的な部分でしかないですよ」という事なのです。
本当に良い楽器というのは、発音特性が良い(音が出しやすい)だけでなく、性能の良い弓で楽器の底まで鳴らしたときに、それに答える反応を見せることが出来るのです。楽器が飽和しないのです。
さらに意外に思われるかも知れませんが、小さなピアノの音も出るのです。多くの方は、小さな音ってどの楽器でも出ると思われているかも知れませんが、先で例に挙げた楽器を弾くと、小さな音を出したつもりでも、中くらいの音が出てしまうのです。
良い楽器というのは、オーディオアンプのボリューム調整を自在にするように、演奏行動(弓のスピードと圧力)に対して、楽器の反応(すなわち音)がきちんと比例して出るような楽器なのです。楽器は感覚論ではなく、道具の物理性能とをして捉えるべきなのです。
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