なぜ「良い楽器」が自分の演奏を導いてくれるのか？

　私は「私のお勧めする良い楽器を購入したら、まるで楽器の方が演奏を導いてくれますよ」と説明します。

　これって、まるで嘘のような話に聞こえるかもしれませんが、本当なのです。私が数多くの科学的、客観的観察を行ったり、実験をしたりしているはご存じと思います。その私が、言っているのです。だから、たんなる感覚論、感情論、気分的な感想ではありません。

　例えば現在在庫のカントゥーシャ作のヴァイオリンやチェロ等は、その中でも顕著です。まるで指板に、そこを押さえるべき凹みが付いているかのような感覚がしますし、さらに指の方が意識よりも先にスラスラと動いていく感じさえもします。

　それは、楽器の倍音成分の素直さと、楽器の発音特性良さ、さらに重要なのが楽器のダイナミックレンジの高さ、そして調整による物理的な寸法からくる弾きやすさなのです。

　音が出にくい楽器を無理に弾こうとすると、頭が熱くなりますが（それを演奏に集中していると思い込んでいる人も多いです）、実は弾きやすい楽器を弾くと、頭がクールになります（俯瞰から自分を見ている感じ）。