先週と今週の「題名の無い音楽会」はウィーンリングアンサンブルの演奏会でした。

 以前にも何度か書いたことがありますが、キュッヒル氏のボウイングは、物理的にとても理にかなっている理想的なボウイングだと感じます。だからあの、弓がまるで弦に吸い付くような、鋭い(速い)運弓が可能になるのです。

 同じ原理のボウイングを行っているのは、チェロ奏者のロベルト・ナジ氏です。彼のボウイングは一見キュッヒル氏とは正反対に見えるとても穏やかで、ソフトなボウイングに見えます。
 しかし、ボウイングの原理はキュッヒル氏のそれと同じで、弓が弦に吸い付いています。弓が全く跳ねていないのです。
 一見力を入れていないように感じるのですが、とても大きな圧力がかかっているはずです。だからチェロの音が出ていて、さらにダイナミクスも表現できているのです。

 これはまさに、落合のバッティングです。

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