「弓によって演奏の表現力がまるで異なる」という事は私はあちこちで主張しています。感覚的に違いが出るのではなく、演奏の原理的に、すなわち物理原理として違いが出るのです。
先日、あるプロのフリーの演奏者が私の所で弓を購入しました。この方は私の工房に初めて来てからもう2年くらいになるのですが、最初は楽器の状態も酷く、正直なところ褒められたものではありませんでした。しかし徐々に楽器の調整を繰り返し(時間、予算的に一度にはいきませんでした)音がみるみる変わっていったのです。
そして今回、弓の購入に至りました。若いフリーの演奏者にとっては数十万円の弓でもそう簡単に買える価格ではありません。そのために、私の工房に最初に来たときから「良い性能の弓への持ち替え」を勧めていたのですが、今回それが実現しました。
弓の試奏段階から、もう弾き方が全く違うのです。正直なところ、試奏を見ながら私は内心「こんな凄い演奏をする人だったのか!」と、感心していたのです。
後日、本人も友人から「いったい今日の演奏はどうしちゃったの~?」と言われたといって嬉しそうでした。
私の所で弓を購入した方へのおべっかでこんな事を書いているのではありません。ただ、素晴らしい演奏(者)がこの世にまたひとつ現れたことが、そしてそれに関われたことが素直に嬉しかったのです。
関連記事:
- 「弓の性能の違いを切実に感じました」
- 3本の異なるヴィオラ弓の性能と、それによるボウイングや音質、音量の違い
- 理解している人にとっては、弓の性能の違いは数秒で判ります
- 弓の重要性の話を理解していただけると嬉しいです
- 演奏とスポーツの違いは