フロッシュの8角ネジの金属部分が割れてしまうのは、主に次の3つの要因です。

1.下手な毛替え作業を行ってしまって、馬毛の長さが長すぎることや、または長期間毛替えを行わなかったことによって、馬毛が長くなりすぎた状態で弾き続けた事が原因。

正しい馬毛の長さの場合


 a.馬毛を一番緩めた状態。


 b.8角ネジを回して、馬毛を張って演奏する状態。真鍮の雌ネジ(黄色い部分)は、左右に動く余裕があります。

 

長すぎる馬毛の場合


 c.馬毛を緩めた時点で、フロッシュの一は既に中間の位置になっています。


 d.馬毛を張ろうとして8角ネジを回そうとしても、雌ネジ(黄色の部分)が既に壁にぶつかっていて、これ以上は動きません。

 毛替え作業が下手で、馬毛の長さが最初から長すぎる場合や、長期間毛替えを行わなかったために馬毛の状態が長すぎる状態で、演奏しようとして毛を張ろうとしても、「d.」のようなフロッシュが構造上もう動かない状態になります。この限界状態を知らずに、さらに強引にネジを回してしまうと、ネジの差し込み部分(四角形の断面をしています)が、8角ネジを内部から押し広げて、破損してしまうのです。これで、8角ネジの金属リング部分が破れて、割れが生じます。

 上記の馬毛の長さが原因では無いのですが、似たような理由として、フロッシュの動きが悪くなったのをそのまま強引に使い続けることで、弓ネジにストレスがかかり続けて、8角ネジが割れてしまうという要因もあります。

 

2.雄ネジの差し込み部分が錆びて、膨張してしまったため。


 8角ネジに差し込んだ雄ネジ棒(スクリュー)が錆びてしまうと、棒が膨張します。それで8角ネジを内部から押し広げて、金属リング部分が割れてしまいます。

 

3.長年使っている内に、8角ネジの表面や小さな隙間から、汗などが染みこんで、8角ネジの本体部分である黒檀を膨張させてしまいます。それで2.と同じように、金属リングを割ってしまうのです。

 

 このような割れが生じた弓でも、精密レーザー溶接機で修理が可能かもしれませんので、ご相談ください。

 

 

 

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