冬になると、「ケース内の楽器の糸巻きが緩んでしまいがち」という症状の方は多いと思います。昨日にも、お客様とそういう会話をしたばかりです。

 なぜ冬期に糸巻きが緩みやすいのかというと、おそらく湿度の低さが原因と考えられます。

 昨日のチェロのお客様は、湿度が低くなることで糸巻きが細くなって、弦が緩んでしまうと推測されていました。しかし私の推測は、糸巻きよりも糸巻き穴の直径の変化の方です。

 と言うのは、私のこれまでの経験で、糸巻きに使われている黒檀材はとても硬いので、環境の湿度変化によって急激に体積変化は起こさないと考えられます。しかし、糸巻き穴(渦巻き)の構成材のカエデ材の方は、意外と湿度変化で変形するのです。

 精密な計測をしたわけではありませんが、湿度が下がることで糸巻き穴が開けられている糸倉部分の体積が収縮して、結果的に糸巻き穴の直径が大きくなると想像できます。

 一見、乾燥によって木材が収縮すると、穴の直径も小さくなるように錯覚しがちですが、実際には穴の直径は大きくなるのです(相似縮小のように、極端な縮小の話ではありません)。

補足:さらに精密な要因をあげるとしたら、「乾燥による糸巻きの直径の変化」と、「乾燥による糸巻きと穴の摩擦係数の変化」もあるのかもしれません。

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