糸巻き(ペグ)の形や材質によっては、壊れやすいタイプもあります。それは一般的に「ハート型」と呼ばれている、下記写真のタイプの糸巻きです。

 複雑な細工でお洒落なので、高級部品として採用される事が多いタイプなのですが、強度的に若干弱くなってしまうというのがデメリットです。もちろん、不具合が出てしう割合は極々少数ではありますが、割合的にはこの「ハート型」が多いです。

 さらに、折れてしまう材質は「ツゲ」が特に多いです。次に「紫檀(パリサンダー、ローズウッド)」も多いです。というのは、これらの材質は黒檀と比べて弱いからです。

 折れてしまう糸巻きは、ヴァイオリンの場合だとE線、A線が多いです。「折れる」というよりは、「ねじ切れる」という感じです。

 糸巻きの把手を回そうとしたときに、糸巻きの軸は固定されているのに把手だけが微妙にグラグラする、または微妙にグニャグニャと捻れるという感覚を感じたときは、もしかすると糸巻きの木材繊維の強度が弱くなってしまっているかもしれません(ねじ切れる寸前です)。

 上写真の様に折れてしまった場合、もう修理は不可能です。

 したがって、折れる前に「補強」することで、根本的な解決というわけではありませんが、糸巻きの寿命を長くすることができる可能性が広がります(これで大丈夫とも言えませんが)。

 つい最近も、ヴァイオリンとチェロの糸巻きを補強しました。下記写真は、チェロのA糸巻きです。ちょっと見栄えは悪くなりますが、その点は目をつぶってもらいます。

 私や技術専門家は調整時や弦交換の時に、このような不具合にも敏感に感じて対処できるのですが、自分で通販などで安く弦を購入して自分で交換をしている人は、こういうところまで気が回らないのです。それが「技術」であり、専門店で弦を交換するメリットでもあるのです。弦の販売価格が通販よりも若干高いのは、こういう専門技術が含まれているからです。それを考えたら、「激安」と思いませんか?

 したがって、小まめに調整に通うというのが、大切な楽器のために一番重要なことです。

 トラブルが起きてからだと、いくら泣きつかれても、どうしようも無いからです(もちろん大金と長い時間をかけて修理する事は可能ですが)。

補足:ちなみに上写真の補強材は、単に接着剤を流し込んでいるという単純な方法ではありませんので、ご自分では絶対に行わないようにしてください。接着剤で固定しても、捻りに対しての強度は確保できません。

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