よく中学生や高校生から工房見学や体験依頼の電話が来ます。学校の授業でこのような電話をかけさせているらしいのです。
 しかし学校関係者は一体何を考えているのでしょうか?子どもにとって良い経験になると思っているのかもしれませんが、こちらは「真剣勝負のプロの現場(ある意味”戦場”)」です。
 対応するためにはそれなりの準備も必要ですし、時間を費やせばお金もかかります。子どもへの安全性、自分の製品へのリスクもかかります。
 子どもから電話がかかってきただけで「ハイ、いいですよ!」と善意の気持ちだけで安易に受けられるほど甘い世界ではないのです(公務員さんには分からないのかも・・)。
 事実、私の近所の食品工場(小さな工場)の人も、「毎年小学校の見学を善意で受けていたが、学校側が見学させて”それでお終い”。子どもが我々に興味を持ってくれるような教育をしているとは思えないし、就職してくれるわけでもないし・・・善意で行うのにも限界がある」と話していたそうです。
 この愚痴は私にもとてもわかります。

 私も何度か見学を引き受けたことはあります。しかしそれは学校側の強い意志を感じたり、先生の熱心さを感じた上での事です。生徒にアポを取らせるような学校の依頼には絶対に引き受けません。

 子どもの依頼を断るのは私としても嫌なことです(子どもは多かれ少なかれ傷付くことでしょう)。しかし学校側には「子どもからの依頼ならば・・」という甘えがあるのではないでしょうか?
 もしも子どもに行動力とかを付けさせるためにそれを行っているのでしたら、それは時期尚早です。戦場にいきなり子どもを出すようなものだからです。まず最初は学校側が、きちんと企業にアポをとって(教育方針を理解させ)準備をし、その次に子供達にアポ(の真似)を取らせればよいのです。

 一番重要なことは、教員自体がその職業に興味を持っていなければなりません。教員自体が、普段から町の工場の方と親交を深めているでしょうか?生徒を行かせる前に、自分自身が興味を持ってそこに研修(見学)に行ったでしょうか?授業の研究課題(継続的な)にしているでしょうか?そのような普段の行動が、「善意(見学可)」につながるのです。

 学校の成績の良い生徒に、進路指導で「医者」や「弁護士」、「大手企業」などへの進路を紹介することはあっても、学校側から旋盤工や食品加工などの仕事を勧めることはほとんどないはずです(生徒が自分で言い出せば別ですが)。なぜならば、先生自体にそのような職種への興味や尊敬の念がないからです。視野に入っていないと言った方が良いでしょう。

 全ての職業の、それもトップクラスの人達は、どれも皆同じくらい凄いです。まずは学校側(教員側)が社会に出て、勉強することをお勧めします。


 最後に補足しますが、この内容は教職員や文部科学省への中傷ではありません。私の両親も教員でしたし、私の妻も教員です。私自身も学生だった頃は教職を目指していました。また、私の大学の友人には多くの教員がいます。

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