チェロって冷静な眼でみると、とても不思議だと思いませんか? まるで案山子の様な一本足で、しかもとても細くて不安定な状態です。

 調整においても、この不安定さをいかにコントロールするかが技術の見せ所なのです。

 簡単に言ってしまえば、エンドピンの剛性(素材の種類によっての太さ)と、エンドピンの装着角度を理想的にコントロールすることで、楽器に1本のビシッとした芯が通った感じになり、チェロの不安定な横振れが少なくなるのです(補足)。

 それによってチェロの目に見えない暴れが少なくなり、摩擦力の途切れ(すなわち掠れ)が減少します。

 エンドピンの調整だけでチェロの音が激変するような、まるで魔法のような甘い話はありませんが、しかしこのような「理」にかなった操作(調整)を積み上げることが、音の向上に繋がります。

 逆の事も言えて、各部品による物理的な効果の意味が判っていない技術者や演奏者が感覚的な操作を行っても、結果に繋がらないものなのです。統計誤差の掛け合わせをいくら積み上げても、プラスにはなりません。

 

補足:チェロの横揺れを完全に無くせば良いというものでもありません。例えば超重量で、さらに剛性がとても高いようなエンドピンだと、チェロの端の運動が固定されてしまい、音が悪くなってしまいます。大げさに例えるのなら、チェロの下部をコンクリートの土台で床に直結固定してしまうイメージです。
 楽器の終端はある程度自由である方が発音特性が良くなり、さらに倍音が出て響きが良くなります。終端抵抗の考え方です。

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