100m走陸上競技のスタートをイメージしてみてください。
トップアスリート達が号砲の音の瞬間、鍛え上げられた脚の筋肉でスターティングブロックを蹴ってスタートダッシュします。
ところがそのスターティングブロックの固定が甘くてズレてしまったら、理想的なスタートダッシュを行えるでしょうか?
これはチェロでも全く同じなのです。
弓で弦を振動させる仕組みは、一見連続的に振動させているように感じるかもしれませんが、実は細かなピッキングの連続によって行っているのです。もっと判りやすく例えるのなら、細かなピッツィカートの衝撃を加え続けているのです。
ピッツィカートというのは、弦、すなわち楽器に瞬間的な振動を加える奏法です。それは衝撃として楽器全体に伝わります。
そして楽器の固定端であるエンドピン先が、楽器のブレをグッと抑えるのです。
これはまさしく100m走のスターティングブロックの原理と同じなのです。この時エンドピン先がブレてしまうと、楽器が寄れてしまって(逃げてしまって)理想的な発音が出来なくなってしまうのです。すなわちエネルギー効率が悪いのです。
スポーツの場合にはタイムとして如実に結果が出てしまいますので、理論とか科学とかを追究するのですが(特に現代のスポーツでは)、この演奏業界ではそういった考えはまだまだ微小数派です。
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