あるチェロのお客様から、「私よりも、佐々木さんの方が良い音を出せていて、驚いています」と言われました。

 実は、似たようなことをけっこう多くのチェロのお客様から言われたことがあります。

 それはなぜかというと、「私がチェロを弾けないから」なのです。

 おそらくほとんどのお客様の目標は、「演奏が上手になること」です。ところが「演奏」ってとても複雑で難しいのです。だから「演奏」に拘るほどに、それ以前の「良い音を出す」という行為への意識が薄れてしまうのです。

 その点私は、チェロを弾くことが出来ません。だから演奏という複雑で難しい行為を頭から行わない割り切りがあるため、「良い音を出す」という行為、すなわち運動を確実に実行できるのです。

 逆の事も言えて、「良い音を出す」という事は、理にかなった道具を使って、理にかなった運動を行えば、(完璧ではありませんが)誰にでも出来ることなのです。

 そしてその「良い音」が、良い演奏に大きく役に立つのです。

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