お客様から楽器を受け取るときに、簡単な確認をします。例えば、指板の状態をチェックしたり、楽器をコンコンと叩いて響板が剥がれていないか確認したり。

 それで「特に問題は無いみたいですね」と言って受け取ることも多いのです。

 しかし、そのようにお客様の前で確認した楽器でも、実際に作業を始めると、壊れていたり、状態が悪いと、そこで初めて気づくことも多いのです。

 お客様からしたら、「あの時に、『問題無い』って言ったくせに・・・」と、不信感を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、作業を開始してから初めて気づくような事もとても多いのです。

 例えば現在お預かりしています楽器も、お客様の目の前で軽くコンコンと叩いてチェックして、「問題ないと思いますから、毛替えと弦の交換と、ニス修正&磨きだけ」という事でお受けしました。

 ところがニス磨きのために弦を全部外したところ、表板が剥がれていることに気づいたのです。

 1ヶ月くらい前にも、全く同じような事例がありました。珍しいことでは無いのです。

 弦が貼った状態では、楽器に弦の張力による外力がかかっていますので、楽器が歪んだ状態にあるのです。だから響板が剥がれていても、見た目的にくっ付いている状態になっているのです。ところが弦を外したら、楽器の内部歪みが変化して、響板の剥がれが顕著になったのです。

 また、指板の状態の確認でも、弦を張った状態で指板を確認して「問題は無いのでは?」と思っても、弦を外した状態で指板をより精確に確認すると、想像していた上に傷んでいることも多いのです。

 このように、楽器の状態は実際に作業を始めてみなければ判らないのです。

 だから最初に料金を予想する事も不可能なのです。なぜなら、どのような症状なのか予測できない料金を予測することなど無茶だからです。

 何も適当なぼったくり料金を請求するために、適当なことを言っているのではありません。正直な事を行っているからだと御理解ください。

補足:そんなわけで、何が起きても対処できるように、調整に預ける期間はできるだけ多い方が理想的です。

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