よく、自分の楽器について「この音色が好きなんです」と言っている人が多いです。または、楽器を購入するときに、「この音色が好み」と言って購入する人も多いです。

 「音色」って言葉の響き、なんだか神々しいです。

 しかし「音色」って注意が必要なのです。というのは、「音色」ってかなり主観的な表現だからです。私がたくさんのお客様と接してきた経験では、長く使っていれば大体は「自分の楽器の音色が好き」ってなるのです。ようするに「慣れ」です。「自己肯定」とも言えます。

 それでは本当の意味での音の良い楽器とは何か? 「音色が良い」と「音が良い」の違いは何なのか?

 それは「主観的評価」と「客観的評価」の違いなのです。別の言い方をすれば「感覚」と「物理量(音響)」の違いです。

 すなわち、良い楽器とはきちんと物理量が優れているのです。音響的な意味で優れているのです。だからそういう良い楽器に初めて接したときに、人によっては??と馴染めないこともあります。なぜなら多くの人は、最初は自分の価値観の殻を守ろうとするからです。これは生物の本能の問題です。

 ようするに、自分で自分の価値観の殻を越えた良い楽器は原理的に選べません。

 だから、本当に信頼できる専門家に勧めてもらうのです。それが良い楽器なのです。お客様は楽器を選ぶのではなく、売る側の人を見極めるべきです。

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