40年前の学生時代にPCM録音したある演奏会(ベートーヴェン第9)の事なのですが、ホールの音響担当者がSanken MSマイクロフォンのマトリクスボックスの接続を間違えたらしく(正確な事は追求しませんでしたが、ホール担当者が恐縮していたのを記憶しています)、PCM録音された音が異様だったのです。
明らかに位相がおかしく、当時、我々学生オケの録音担当者はMSマイクの原理とか色々調べて、接続間違えの原因を調べたり、または改善策を考えたりしていました。
しかし当時は今のようにデジタル処理ができるわけでもなく、学生レベルが所有しているオーディオ機材のアナログ処理だけでは限界もありお手上げ状態でした。
私はその後もずっと気になっていたのです。
そして先日、オリジナルのPCMテープ(ベータテープ)を当時の仲間から借りて、再検討を行おうとPCMテープのダビングに挑戦しました。
40年間も時間が過ぎたので、ベータテープにはカビも発生して、ドロップアウトと多かったのですが、録音されている音質自体は、当時のそのままです。これがデジタル記録のメリットです。
当時のダビングと違って、今所有している機材はレコーダーの機能も高性能です。Tascam HS-P82というレコーダーなのですが、記録前にMS処理が行えたり、位相を変えることもできます。
さらに録音されたデジタルデータを波形ソフトで分析したりすることもできます。
40年前には出来なかった、色々な分析が可能となったのです。
それで結論が出ました。記録されていたデータは、片chだけ位相が反転したモノラル音源だったのです。正確に言えば、左右の音量差があったり、微細なノイズの出方とか、完全なモノラルとは言い切れませんが、左右ch間で実質的な音情報の差は無いという結論に達しました。
どのようなマイク線の接続間違いでこのようになってしまったのかは今となっては判りませんが、40年越しに、「正常なステレオ化は修復不可能」という結論が出たので、気分的にスッキリしました。
このような検証ができなのも、当時のデータを40年間も大切に保管してくれた学生オケの仲間達が居てくれたからなのです。ありがたいことです。