少し前に音響可視化カメラの記事を書きました。「音を見る」って、私が何十年も前からずっとやりたかった事の一つだったのです。
私は楽器の音を客観的に判断するために、「録音」とか「FFT解析」とか、「ビデオ撮影」、「オーディオ再生」とか色々やって来ました。その中の一つに、音響可視化カメラもあるのです。
ところがこの業界は、文系的な表現の方が受けが良いのです。だから弦楽器の専門家で私のような事を行っている(私の知る限り)同業者はいません。「佐々木さんは相変わらず変なことを行っていますね」って感じです。
お客様からも、趣味と思われていたりします。
しかし私は一貫して言いたいのです。「音は物理現象の結果でしか無い」と。
すなわち、楽器の性能を客観的に把握するためには科学的なアプローチ以外に道はないと思うのです。ただし、「学問的」とは違います。そこを勘違いすると、またインチキ臭くなってしまうのです。「学問」が本質的とは言えないからです(注)。
さて、話を音響可視化カメラの事を戻します。
最近音響可視化カメラで楽器(特にチェロ)の音を観察していて、空間に広がる「定在波」の特徴が見えてきたのです。これが「楽器の余韻」とも大きく関わってきているという事も判ってきました。
問題はここからなのですが、「定在波がどうやったら発生するのか」という点です。
もちろん、定在波が発生しやすい部屋の共鳴環境とかもありますが、それ以外にも「連続した、一定の振動を加える続ける事」というのが重要であるという事も見えてきました。すなわち、実際に弓で弾いている音では定在波は起きにくいのです。
しかしカントゥーシャ作の楽器とか、本当に良い楽器の場合には、弓で演奏して出す音がとても素直なため、定在波とまでは言わないまでもそれに近い響きを生み出すのです。また開放弦の余韻の影響かもしれません。
良い楽器って、「余韻」とか「響き」が凄いのです。私は「音が飛ぶ」って表現していましたが、正確に言えば「定在波」を生み出しているのかもしれません。
みなさん(特にイタリア楽器至上主義の方々)、私がカントゥーシャ作の楽器を意味も無く宣伝していると思っているかもしれませんが、ちゃんと技術的は当然として、科学的アプローチからも分析しているのです。
注:学問(物理研究)は数式の論法で完結しなければなりません。しかし弦楽器には不確定要素があまりにも多く、微小区分の研究ならばいざしらす、楽器総合の研究は不可能に近いからです。例えば「良い音の定義は?」とか「木材の特性は?」とか、「魂柱の仕組みと具体的な調整の実現」、「弓の性能と摩擦力」など、不確定要素をあげようと思えばさらに数十、数百はあります。
だから弦楽器の「総合研究」は限界があるのです。それで伝家の宝刀「ストラディヴァリの・・・」とかに逃避しがちなのです。それでは裸の王様の研究なのです。
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