テレビで演奏している映像、自分の演奏映像、または他人が演奏している姿を観察すると、プロの演奏者も含めて半数以上の人が「指板寄り」を軽やかに演奏している事がわかると思います。

 「演奏が上手なら、それで良いのでは? 何が悪いの?」って思われる方も多いと思います。

 しかし、指板寄りを弾く癖の方は、物理的に「音が柔らかく、ダイナミックレンジが狭い」のです。弦の中心近くを撥弦すると、原理的にそういう音になるのです。

 例えば、ティンパニーの中心を叩いてみてください。良い音は出ませんし、意外に思われるかも知れませんが音量も出ません。打楽器奏者がどこを叩いているのか、観察してみてください。

 それではなぜ多くの演奏者が指板寄りで弾く癖があるのかというと、次の3つの理由があります。

1.弓の性能が低いので、「圧」をかけたボウイングが不可能。だから、弓のスピードを利用した撥弦を行うことになり、自然と発音しやすい指板寄りを弾いてしまう。逆の事も言えて、性能の低い弓では、駒寄りを弾こうとしても擦れてしまう。

2.楽器の性能が悪いので、発音が悪く、どうしても音を出すために指板寄りを弾いてしまう。
 または、楽器の性能はそこまで悪くないのに、勘違いの調整を施されてしまっていて、指板寄りでしか音が出にくくなっている楽器もたまにあります。

3.演奏者が、楽器と弓の理論と、ボウイングの理論を座学として教わっていないために、間違ったレッスンを受けてしまっている事も多いのです。もっと具体的に指摘するならば、良い音を出すための演奏ではなくて、パフォーマンス的な演奏(運動)をダイナミックと勘違いしてしまっているのです。

 いずれにせよ、「理」を通せば、音は激変します。数十年も努力しても出なかった音が、あっという間に出せるようになります。

 私は都合の良い魔法の技術は持っていません。しかし楽器における物理的な「理」は誰よりも知っているつもりですし、それを実行できる技術も持っています。だからこうして主張し続けているのです。

 重要なのは、この業界に蔓延している間違っている考え方(情報、権威)に対して、疑いの目を持ち、勇気を持ってそれから外れた道を追求することです。そうしたら、音は変わります。

関連記事: