私は少し前のブログ「上手なのに、演奏の表現力が今ひとつだと悩んでいる方のその原因は」の中に「間違ったパフォーマンス」という事を書きました。実際の演奏には何の「理」にもかなっていない「見た目」を表現力だと勘違いしている人が余りにも多いと感じるからです。
一週間前くらい前ののテレビ番組中(題名のない音楽会だったかな?)で中村紘子さんがミニ公開レッスンを行っていました。そこでまさに、上記と同じ内容の指摘をしていたのです。
それは若い演奏者が曲の最初を迫力をもってバ~ンと叩く音なのですが、その娘は鍵盤を叩いた後に、手をぐんと上に跳ね上げて、私の言うところの「パフォーマンス」にはしっていたのです。すかさず中村紘子が適格な指摘をしました。「あなたのように手を上に跳ね上げたら、ピアノに力が伝わらない」と言い、「このように弾くべきだ」と言ってバンと鍵盤を叩きました。
私のような素人が見ても全然違いました。生徒の弾き方は、鍵盤への「瞬間的な力のかけ方(そして瞬間的に鍵盤を叩いた後には、大して意味のない見た目のパフォーマンス)」だったのですが、一方、中村紘子の弾き方は、身体の力がピアノにずっしりと伝わっているのです。「力積」です。
もちろん出た音も全然違いました(両者のピアノに仕込まれているマイクのセッティングの差を考慮しても)。
名人って、ようするに「理」にかなった事を行っている人なのです。