私のところには「楽器製作を教えてほしい」とか「質問が・・」とかの要望が頻繁にあります。そして、そのほとんど全てが年配の方々からなのです。申し訳ありませんが、その全てをお断りしているのですが、しかし年配の方々のパワーには感心します。
 一方、20才前後の若者からの要望は全くと言ってよいほどないのです。少し前に弦楽器協会の役員会の雑談の中でもそのような話題が出ましたが、他の工房でも私と同じような傾向を感じているようです。
 それはどういったことかと言いますと、「辛い」のを避けたがる傾向です。弟子というのは正直言って厳しい世界です。そのような厳しい世界に飛び込んでまで、より高いものを求めようとする若者がどんどん減ってしまっていると感じるのです。「根性無し」とか、「我慢できない」という話題になっていました。
 それでは今時の若者が弦楽器製作という職業に興味がないのかというと、そうでもないらしく、彼ら(彼女ら)は専門学校にすすむのです。その専門学校のレベルをここでどうこう言うつもりはありませんが・・・。
 以前専門学校を卒業したという若者が弟子希望で来ましたが、私の方がショックなくらいでした。それは当然なことです。専門学校は学費を取っている以上、2年間とかの短い期間に「形に残る事(楽器を作る)」をしなければなりません。従って基礎を全てすっ飛ばしてしまうのです。
 ところが後々重要になってくるのはその「基礎」の部分なのです。若いときに地道な「基礎」をたたき込まれているかどうかこそがとにかく重要なのです。この「基礎」だけでも最低数年はかかることです(正確には一生追求しても足りない)。
 アマチュア製作者と、本当の意味でのプロの製作者との違いも、この「基礎」の部分にあります。
 このように、若者が目先の辛さを避ける傾向にあると感じる今日この頃、将来の日本の技術力はどうなってしまうのか心配です。若いときに基礎力をたたき込まないと、後で応用力は身につかないのです(歳をとってからでは吸収できないのです)。
 全ての職業において言えることですが、「厳しさ」は虐めでも、嫌がらせでもないのです。「本当の愛情」です。それがなくて、赤の他人にわざわざそんなことを言うでしょうか?最近は実の親でさえ、子供を叱らないというのに。
 今現在、仕事で悩んでいる20歳台の若い人たち、今はぐっと辛抱して、だまされたと思って、他人(上司とか)の言葉を吸収してみてください。後々、それこそがあなたの財産となることでしょう。今は納得できなくても良いのです。

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