先日弦楽器製作工程DVDを購入して下さった方から感想のメールがありました。そこには「一つ一つは普通の作業のように思えますが・・・」というような内容がかかれていました。これこそがまさに私がお伝えしたかったものなのです。「技術」の本質です。
 新作楽器製作においてだけでなく、楽器の修理・調整技術に関しても全く同じなのですが、技術の一番核心は「魔法の技術はない」という事なのです。「秘伝」とか「ゴッドハンド」などというようなものは存在しないということです。あるとしたら、それはマスコミが素人受けを狙ってそう表現しているだけです。
 正直なことを言いますと、私も「それっぽい事」を並び立てて、さらに「秘密っぽいこと」をちょっとだけ含ませた方が、素人受けが良いということは知っています。特に言葉上で、白か黒かはっきりできるような表現が好まれるのです。しかし実際にはその白と黒との間にいくつもの要素があり、さらに各要素の組み合わせ分だけ結果の幅が出ます。このような複雑な現象を安易に言葉だけで結論づけることは非常に危険なのです。
 高度な技術の本質は「普通の技術」です。「普通の技術の連続・継続」こそ、「高度な技術」と言えるのです。しかし継続するためには、我々技術者側の努力だけでは半分しか成り立ちません。残りの半分は皆様側の努力なのです。

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