今春、私の工房に弟子入りした川口君ですが、最初はあまりにも何も知らなくて「大丈夫かな?」と思ったときもありましたが、毎日色々な事を勉強して、ちょっとずつですが日に日に「プロのレベル」の意識や感覚を吸収しています。
彼は大学在学中にはオケ活動にどっぷりはまっていました。大学オケでは名の知れている「早稲オケ」なので、本人もちょっとはプライドがあったと思います。しかし、楽器のプロレベルから言うと、赤ちゃんレベルでしかないのです。最近の若い子に多い傾向ですが、「こだわり」が無いのです。「ほどほど」で満足している傾向にあります。川口君も同じで、これまで「様々なものの性能の追求」というのに対してあまり興味が無かったみたいでした。しかし最近は、川口君も自分がこれまで楽器の音について何も判っていなかったという、それが判ってきたみたいです。
先日も、ポータブルレコーダーを購入して自分の音を録音してみたり、または私の工房のオーディオ装置で、「良い音のCD録音を聴きたい」と言ってきたり、パソコン関連の性能についても実際に自分で購入することによって勉強したり、とても熱心です。数ヶ月前の川口君から、一皮むけました。
ヴァイオリン製作の修行というと、ノミやカンナを持って、一日中作業机に向かうことと思っている方がほとんどなのではと思いますが、そうではないのです。作業技術の芯(真)になるものを構築することも、とても重要なことなのです。
それは何か? 一言で言うのはとても難しいのですが、「人として生きていく上での好奇心」と「他人を凄いと思える事」と「感謝の心」、さらに「気配り」だと思います。